研究概要 |
自己発熱法(SHS法;燃焼合成法とも呼ばれる)は,高融点無機化合物や金属間化合物の迅速かつ経済的な合成法であるが,燃焼学的・伝熱学的観点からの研究は少ないのが現状で,傾斜機能材料創成に必要不可欠な可燃範囲についても研究が緒に就いたばかりである. 本研究は,チタニウムと炭素から炭化チタニウムを燃焼合成する系を研究対象とし,SHSの合成機構を素材の融解,反応,凝固過程と考えて,燃焼学的・伝熱学的立場から実験的および解析的研究を行い,燃焼波伝播に及ぼす主要パラメタの同定を行った後,得られた知見を基にして,傾斜機能材料の創成を目指すものである. 実験的研究においては,大気圧アルゴン雰囲気で圧粉体試料を着火させ,燃焼速度をビデオ装置を用いて測定した.この際,炭素とチタニウムのモル混合比,希釈剤としての炭化チタニウムの質量割合,および使用する炭素粉末の粒径を広範囲に変化させて,燃焼波の伝播が可能な可燃範囲をも求めた.その結果,混合比,希釈度については可燃限界が存在し,可燃限界に近づくほど燃焼速度が低下することが判明した.また,燃焼速度が炭素粒径に反比例することや,間欠脈動燃焼のような非定常な燃焼形態の出現には,反応帯での熱発生率が密接に関係していることが確認された.さらには,間欠脈動燃焼の抑制には,反応帯での熱発生率を希釈により低下させることが有効であることもわかった.解析的研究では,定常一次元的な火炎伝播について,これを液体金属中に分散する非金属粒子の燃焼と見なし,噴霧燃焼と同様の支配方程式を導くとともに,これを「固有値問題」に帰着させて解析し,燃焼速度や可燃範囲を数値的に求めた.さらには,解析結果と実験結果との比較を行い,両者の間に比較的よい一致が見られることを確認した.
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