研究概要 |
本年度の研究成果は以下のようにまとめられる。 (1)液体の凝固過程における,液体表面に存在するリプロンを観測する最初の試みとして,常温付近に凝固点を有するp-キシレン(凝固点286K)を試料として,時間に対する温度変化を緩やかにして実験を行った。64回の平均よりリプロンのスペクトルを決定し,その結果約30秒間隔で表面張力および動粘性率の変化を動的に捉えることができた。その結果,液体の凝固点に近づくに従い,表面張力と動粘性率の急激な変化を検知でき,この方法が原理的に適用可能なことが明らかになった。 (2)リプロンの波数選択の方法として,回折格子を使用しているが,よりリプロンからの散乱光強度を強くするために,従来の100mumの回折格子から200mumに変更した。その結果,従来に比べ非常にS/N比の良いスペクトルが得られ,表面張力,動粘性率の再現性を向上させることができた。常温の水の測定の場合の再現性は,表面張力については±0.4%,動粘性率については±11%であった。 (3)再現性の向上により,ばらつきの少ないデータが得られるようになった結果,表面の汚染のために表面張力が時間とともに少しづつ減少していく様子を捉えることが可能になった。
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