研究概要 |
談話は無関係な文の単なる集まりではなく,談話中の文は互いに何らかのつながりを持っている.本研究では,この談話のつながりを明示する表層的な情報である語彙的結束性を用いた語義曖昧性解消手法について述べる.語彙的結束性を表す語彙的連鎖は,談話中の互いに関連する単語の連鎖であり,談話ゼグメントの境界を示す指標として,また,意味解析時における文脈情報として利用できる.本研究では,語彙的連鎖を漸進的に生成する過程で,語彙的連鎖をその重要度の順に管理することで,語彙的連鎖を構成する単語の語義曖昧性を,語彙的連鎖生成と同時に漸進的に解消する枠組を示す.語彙的連鎖の重要度は,最近更新された語彙的連鎖および,より長い語彙的連鎖を上位に来るように制御するものであり,重要度が上位にある語彙的連鎖から順に,現在解析中の単語との結束性を調べることで,その単語の近傍の文脈情報を得ることができるので,この文脈情報を用いた語義曖昧性解消が実現できる.本手法を実際の談話に適用したところ,平均63%の解析精度が得られた.この結果から,これまでの漸進的曖昧性解消手法に本手法を統合することで,解析精度の向上が期待できると考えられる.
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