研究概要 |
現在磁気圏の全体構造を明らかにするための基礎的研究として、相対論的なプラズマ(電子陽電子対から成る)の星風とその磁場の構造を決める方程式(通称GS方程式)を数値的に解いている。適当な仮定を導入して近似解を得た。その結果、流れの中で磁場とプラズマの凍結条件が破られることが示された。これは磁気圏からのγ線放射の説明を与える。この結果は、Aspen Winter conference(Aspen,USA,3-7Jan,1994)で発表された。 電子陽電子放電を起こさなくなったパルサーは、死んだパルサーと呼ばれ電波やγ線パルスを出さないと考えられている。このような死んだパルサーに外的要因でプラズマが供給されると、放電を一次的に起こしγ線でバーストとなって観測される可能性が指摘されている。この様なパーストのエネルギー放射率を計算した。まだ起源が知られていない「γ線バースト」がこのような現象であれば、その距離は100pc程度になる。この時バーストの反復時間が数年であれば、中性子星の数との矛盾を起こすことはない。 磁気圏の全体構造を決めることに依って、回転駆動型のパルサーのγ線放射率や、X線の放射率、パルサー風の強さなどが決定される。簡単なモデルを用いてこれらの量を推定して、観測結果と較べることにした。はじめに述べた、プラズマ中での散逸過程が生じていないとすれば、γ線の放射率はおおよそ回転周期の2乗に反比例し、磁場の強さに比例することが示される。しかし観測の結果はもう少しきつい依存性を示し、これは、プラズマ風中に実際に散逸過程が生じていることを示唆している。 しかし、同時に観測量にかなりの不確定性があり厳密な比較は、観測の進歩に待たなくてはならないことも分かった。特に回転駆動型パルサーから放射されるX線の起源は全く未知であり、磁気圏内の輻射過程のモデル及びエネルギーと時間分解能のよい観測の必要性が感じられる。
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