研究概要 |
超新星1987Aの爆発後1000日頃の光度曲線の理論推定値からのずれを、衝撃波によって加速された宇宙線の電離損失で説明できる可能性を探るのが本研究の目的である。従って超新星残骸中での高エネルギー粒子加速を電離損失も考慮してシミュレートできるプログラムの開発が必須である。本研究開始時点ではモンテカルロ法を用いることを考えたが、途中から大きな方針転換をはかった。高エネルギー粒子の加速伝播過程はFokker-Planck方程式で記述される。確率過程論の分野ではよく知られていることであるが、Fokker-Planck方程式は、それに対応する連立確率微分方程式に等価である。この等価性に着目して連立微分方程式を解くことは、元の偏微分方程式を解くことに比べてはるかに容易である。この方針に沿ってEuler法を用いて確率微分方程式を解くプログラムを開発した。このアルゴリズムを用いるとFermiI,II型の両加速プロセスをほぼ同様に扱うことが可能である。しかし現在のところ粒子は試験粒子扱いにとどまっている。拡散定数のエネルギー依存性は入れない衝撃波によるFermi I型の加速プロセスについては、10^6ケの粒子についてのシミュレーションをわずか約30分の計算時間で実行できる(導入したワークステーションで)。エネルギー損失としては現在シンクロトロン放射のみを入れているが、制動放射、電離損失を入れるのはそう困難ではないと予想される。開発したアルゴリズムでは粒子の空間分布も得られるので、加速粒子からのガンマ線、電波発生の空間、時間変化も予測できる。超新星1987Aでの粒子加速と、電波およびガンマ線生成のシミュレーション結果を近々の内にまとめる予定である。
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