研究概要 |
我々は、インジウムリン半導体検出器の開発を1987年頃から行い1mmφで10μmのエピタキシャル成長層を持ったものをすでに開発している。(Ref)Y.Suzuki et al.,Nucl.Instr.Methods A275(1989) これらは不純物濃度が3x10^<15>cm^<-3>であり、かならずしも満足のゆく性能ではなかったが、サイズが小さかったために、高い分解能を得ることが出来た。しかし、実用的なものになるためには、高純度の結晶(10^<14>cm^<-3>程度)を用いてサイズの大きなものを作る必要がある。最近高純度のインジウムリン結晶が得られたことが報告されており本研究において、高純度のインジウムリン結晶を用いて半導体検出器を開発した。 今回は2種類の検出器を試作した;(1)3mm角で4本のストリップを持つものと、(2)7mm角で7本のストリップ持つものである。3mm角の検出器の測定したC-V曲線を図に示す。C-V曲線から不純物濃度として(1.2〜4.8)x10^<14>が計算される。これは、ほぼ期待どうりの値である。図よりバイアス電圧が-1.5V以上でfull depleteしていることが分かり、このときの荷電欠損領域の厚さは6μmである。製作元での測定によると不純物濃度は1.3x10^<14>ということで、ほぼ我々の測定と同じであった。しかし、エピタキシャル成長層の厚さ12μmまでfull depleteしていないことが分かった。 また、リーク電流もμA以上あり、1mmφ検出器の20nAに対して面積では4倍にしかなっていないのに50倍以上も増加してしまった。検討の結果、これらの2つの問題は、どちらもp層の拡散方法に問題があることが明らかになった。7mm角のものも、ほぼ同様の結果であった。 結論として;(1)インジウムリン半導体検出器として、今までの10倍以上不純物濃度が改善された検出器が製作可能であることを示すことに成功した。(2)今回のものは、リーク電流が大きかったが、問題の原因は解明されている。
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