研究概要 |
1.Fe-B,C,Nの電子状態 鉄中の格子間位置位置に入ったB,C,Nなどの原子は鉄の凝集的性質に寄与するとともに,その磁性に微妙に関わっているらしいことが,Nd2Fe14B系やSm2Fe17N系の永久磁石の研究を通じて明らかになりつつある.特にFe_<16>N_2は実験的に未知な点も多く興味深い.そのような観点からFe_4N,Fe_6N,Fe_8N,Fe_<16>N_2,Fe_6B,Fe_6Cの電子状態をKKR法によるバンド計算に基づいて系統的に調べた.得られた重要な知見の一つとして,格子間イオンがC,B,Nと変わるにつれて,Feと格子間イオンの結合がより共有結合的な状態から,よりイオン結的な状態に変化していくことがあげられる.例えば,Fe_4Nはかなりイオン結晶に近い様相を示す金属であると考えられる.そのため外部パラメータのわずかな変化に対して磁気的性質が大きくかわる. 2.Mg中の格子間不純物と電場勾配 Mg中に核反応を用いて打ち込まれたN等の軽い不純物核は高い確率で格子間位置にとまる.これらの不純物核の電子状態,格子の緩和などの情報はbetaNMRを用いて詳しく調べられている.KKR法による構造最適化を用いてN周辺の格子緩和電場勾配について調べた.まず,hcp構造の異なった4個の格子間位置にLi,Nを入れたときの単位胞当りの相対的な全エネルギーを比較し不純物N周辺の格子緩和を入れると,2個存在する3回対称位置の一つ(trig 1)が最も安定になることを示した.次にこの配置における電場勾配を計算することによって,Liに対してV_<ZZ>=+6.21×10^<18>(V/m^2)を,また^<12>N(NQR共鳴周波数59.3kHz)の四重極モーメントとして12.7mbを得た.後者については最近の原子核理論による予想と良い一致を示している.
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