研究概要 |
本年度の研究計画としては(1)電極表面の再構成の第一原理理論の準備,及び(2)走査トンネル顕微鏡像の定量的解析を取り上げた。(1)については電極表面の状況についての考察を行い,最も簡単で計算可能な出発点の近似模型として,シリコン電極を考え,電極としても電流が流れていない状況で興味がある場合が実験的にも少なくないことを考慮し,表面に水分子を適当に並べた模型が適当であるとの結論を得た。実際の計算は残念ながら,カーパリネロ法のプログラムの当大学情報処理センターの大型計算機への適応に手間取り,計算を進めることが出来なかった。(2)については東北大学金属材料研究所の桜井利夫教授の好意で得られた,シリコン(100)アルカリ金属吸着表面の32枚の走査トンネル顕微鏡像について,7人の学部学生諸君の協力を得て,ステップの揺らぎ,ダイマー欠陥及びアルカリ金属吸着子の相関関数を求める試みを行った。予備的であるが,ステップについてはランダムウオークで説明できること,相関関数の距離依存性についてはダイマー欠陥の場合ダイマー列に垂直な方向には距離のべきに比例すること,アルカリ金属吸着子の場合はすべての方向に距離のべきに比例することを見いだした。ダイマー欠陥の場合は相互作用が非常に異方的であることを,アルカリ金属吸着子の場合はおそらく熱平衡に達していないことを示唆するものと思われる。
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