研究概要 |
本年度は,シリコン(111)表面にアルミニウムを蒸着させた時に現れるいくつかの二次元超構造について,走査トンネル顕微鏡(STM)及びSTM像(トポ像)の電圧変化依存性(疑似STS)により,その原子構造並びに電子構造を調べた.研究結果を以下に示す. (1)低温(400℃程度)でごく微量のAlを蒸着すると,α-7×7という構造が得られるが,そこではAl原子が3量体クラスターを形成し,7×7DAS構造の正三角形の副単位胞の中央に吸着することが明らかになった.この時表面ダングリングボンドの数が単位胞当り19から13個に減少するため,より安定な電子構造が実現されている.また,疑似STSにより,クラスター中の各々のAl原子は最近接のシリコンセンターアドアトムと結合していることがわかった.このためフェルミエネルギー近傍では,反応前には見えるはずのセンターアドアトムが観察されず,電圧を増加させることにより初めて観察可能である. (2)1MLの被覆量で現れるγ相は,これまで考えられていた構造とは全く異なり,シリコンの清浄面で現れるDAS構造と大きく関わっていることが明らかになった.Al原子はダブルレイヤーのシリコントップ原子を置換し表面を終端化する.この時,表面ダングリングボンドの数はコーナーホールのただ一つのみとなる.さらにAlがシリコン格子上に吸着(置換)することにより生じる歪は,ダイマー列により吸収される.また,本相ではいくつかの異なる周期構造が報告されていたが,今回提案したモデルでこれらをすべて説明することが可能である. (3)7×7相におけるAlの置換欠陥,√<3>×√<3>相でのSiの置換欠陥を同時観察し電子構造を比較した.とくに前者は,本研究で初めて観察されたものであり,両者原子間での電子の授受に関する知見が得られた.
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