研究概要 |
原子炉での反応度事故における蒸気爆発現象の素過程解明を目的とし,ノズルから高温融体を噴出することによって熔融燃料-冷却材相互作用を実現し,高速度ビデオ撮影を通して微粒子化過程の観測,ならびに発生圧力の測定を行い,噴出条件と相互作用の発生の有無,溶融物の微粒子化の差異を調べた. 1.まず,相互作用発生の有無と微粒子化過程の可視化,ならびに発生圧力を測定するための実験容器および加熱機能を有するノズルの製作を行った.融体の加熱は酸化膜の形成を抑さえるため,アルゴンガス雰囲気中で行なうこととし,半導体圧力センサー,融液温度と冷却材(水)温度測定のための熱電対を設置した.この実験システムによって,融体最高温度1000℃,サブクール度75℃〜10℃,融体噴出時間3.5秒程度の実験が可能となった. 2.融点が約70℃の低融点物質であるウッズメタルを使用し,300℃〜700℃に加熱溶融させ,ノズルから水中へ噴出する実験を行った.ウェーバー数は,ノズル径と噴出距離を変えて30から100までとし,水温を25℃から60℃の範囲で変え,サブクール度の影響を調べている.水温が25℃の場合,強い相互作用の生じる融体温度の下限界は,ウェーバー数が20の時には約600℃であったのに対し,ウェーバー数が100程度ではおよそ400℃に下がり,ウェーバー数への依存性が強いことがわかった.一方,サブクール度が小さくなると,融体ジェットからの相互作用発生頻度は低下するものの,発生時の規模はサブクール度が大きい場合と比較して大きなものとなった. 3.実験後に行った粒径分布の測定結果から,その分布には二つのピークが存在し,その一つは融体ジェットの液柱不安定化波長から算出した粒子径に一致すること,他の一つはこれよりも粒子径が一桁小さく,相互作用の結果生じたもので,相互作用の激しいほど微粒子化が進むことが確認された.
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