研究概要 |
痛みの神経伝達物質あるいはneuromodulatorとされるsubstance P、またenkephalins,somatostatinの青斑核細胞の膜電流に対する作用及びその細胞内情報伝達機構の解明を目的とする。substance Pはこの細胞で非選択性カチオン電流の活性化と内向き整流K電流の抑制を引き起こすことが明らかになっている(文献1)。またsomatostatin及びMet-enkephalinは青斑核細胞で内向き整流K電流を活性化する。これらのペプチドによって活性化される内向き整流K電流はsubstance Pによって抑制される内向き整流K電流と同一のチャネル電流である事が証明された(論文投稿中)。この同一のチャネルがどの様な細胞内情報伝達機序によって機能的に相反する修飾をうけるかを内向き整流K電流の修飾に関して注目されているアラキドン酸代謝産物(Kurachi et al.,1989)が二次メッセンジャーとして作用する可能性を検討した。 初代培養したラット青斑核細胞にwhole-cell patch clamp法を応用し、somatostatin及びsubstance Pによって生ずる膜電流の変化を記録した。1)phospholipase A2阻害剤(Quinacrine,4BPB)はsomatostatin応答を抑制した。2)この応答はlipoxygenase阻害剤によっても抑制されたがcyclooxygenase阻害剤(Indomethacine)によっては抑制されなかった。またこの応答は5-lipoxygenase阻害剤(AA-861)によって抑えられたが、12-lipoxygenase阻害剤(Baicalein)では抑制されなかった。3)substance P応答に関しても同様の結果が得られた。4)5-lipoxygenase代謝産物の5-HPETEはsomatostatin応答を増強させたが、類似の応答は生じさせなかった。従って、アラキドン酸代謝産物が二次メッセンジャーとして作用する可能性は低いが、これらのペプチドの応答を維持させる作用を持つと推定された。
|