研究概要 |
リソゾームにおけるタンパク質輸送機能発現に於けるH^+-ATPaseの機能について,ATP-依存性リソゾーム崩壊の実験系で検討した.その結果,サイトゾル中に,リソゾームの安定化と膜融合促進活性の存在することを発見した.その内リソゾーム安定化因子は,44kDaのサブユニットタンパク質の三量体と想像される120kDaの分子量を示した.また,膜融合機構については新たに試験管内リソゾーム間膜融合反応測定系を確立し,そのメカニズムを検討したところ,BAPTAによってのみ阻害されイノシトール三リン酸によって回復する事等から,IP_3受容体を介した局所的なカルシウムイオンの濃度勾配を必要とする反応であることが明らかとなった.膜融合反応に関与するサイトソル因子を解析したところ,分子量62kDa付近に膜融合活性と挙動を共にする蛋白質を見いだした.また,リソゾームがGTP-γ-S依存的に崩壊する現象を発見した.異なる膜間の膜融合反応の部分反応を成すと考えられるこの現象は,ホスホリパーゼA_2活性阻害剤によって抑制された.また,GTP-γ-S依存的に活性化されるホスホリパーゼA_2活性がサイトゾル中に存在することを見いだした. 一方,クロフィブレートを投与したラットの肝臓ペルオキシゾーム膜上に誘導されるNEM感受性ATPaseは,ある条件下にはミトコンドリアF_0F_1-ATPaseの選択的阻害剤とされるオリゴマイシンによっても阻害されることから,F-タイプ様の新しいH^+-ATPaseである可能性が考えられるが,ミトコンドリアに典型的に存在するシトクローム酸化酵素は検出されない事を明らかにした.また,本ATPaseがタンパク質輸送並びに基質輸送に働いている可能性について,acyl CoA oxidaseのペルオキシゾームへのin vitro輸送系,及びエーテル型リン脂質合成に必要なdihydroxyacetone phosphateのin vitro輸送系を用いて,現在検討中である.
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