研究概要 |
ATPaseの活性部位領域の結晶化を試みるため、活性部位領域のペプチドをコードするDNAを大腸菌の発現系に導入し大腸菌内に大量発現させて精製した。その研究成果の概要は次のとおりである。 (1)シビレエイNa,K-ATPaseαサブユニットの活性部位領域をコードするDNAを得るためにNa,K-ATPaseαサブユニットの遺伝子クローンから約1.3kbpのDNA断片を得た。この断片をマルトース結合蛋白質(MBP)との融合蛋白質を発現するベクター(pMAL-c2)に挿入し、プラスミドDNA(pMAL/AS-7)を構築した。 (2)構築したプラスミドを大腸菌に形質転換し、遺伝子産物を発現させたところ、pMAL/AS7プラスミドの発現産物である融合蛋白質は分子量、約90kDaタンパク質としてプロテアーゼ欠失株である大腸菌PR745で大量に発現した。発現した融合蛋白質は、その大腸菌の溶解物中では封入体を形成し不溶物であった。そこで、その封入体を6Mウレアで可溶化した後、アミロースアフィニテイーカラムにかけ、大量に精製した。また、アミノ酸配列-Ile-Glu-Gly-Argを認識するプロテアーゼ(ファクターXa)によりその融合蛋白質を切断後、SDS-PAGEにより分析したところ、約42kDaのMBPと約50kDaの活性部位領域蛋白質について等量の蛋白質のバンドが得られなかった。この結果から、ファクターXaは非特異的にも活性部位領域蛋白質を切断し、低分子のペプチドに消化しているものと思わせる。この切断効率の低さにより、大量精製後の活性部位領域蛋白質のみの回収が容易ではないことが予想される。 (3)精製した融合蛋白質に対し、二次構造の解析のためにCDスペクトルの測定を行なったところ,208nmと222nmにαヘリックスに特有なピークが得られた。このことから、得られた融合蛋白質について二次構造が保たれていることが推測される。現在、ATPの結合能があるかどうか調べるためにTNP-ATPを用いた差スペクトルの測定を検討中である。融合蛋白質の切断条件や変性を伴わない可溶化条件も検討している。
|