研究概要 |
今年度は,主として下記の2つの方向の研究成果を得た. 1.ラットH^+-ATP合成酵素のサブユニットの各種臓器におけるmRNA量に関する研究: ラットFoのサブユニットのうちで核遺伝子にコードされている全サブユニット[subunit b,subunit d,subunit e,subunit c(2種),Factor6,OSCP]の各臓器におけるmRNA量の定量を行った.その結果,b,d,e,OSCP,cのmRNA量は,ATPが常時必要な心臓,筋肉で高く,脳,肝臓,腎臓では低いといった臓器間の発現パターンもほぼ等しいことが確認された.ところが,驚いたことに,IF1のmRNA量は,心臓,脳,腎臓で高く,筋肉,肝臓で低く他のサブユニットの発現パターンと全く異なっていることが明かとなった.この結果は,浪費的なATPの分解を阻止するIF1の生理的な必要性が臓器によって異なることを示唆しているものと思われ興味深い.又,subunit c P1及びP2のmRNA量は,臓器間での発現パターンに違いがみられ,P1,P2各々の役割に違いがあることが推測される. 2.ミトコンドリアH^+-ATP合成酵素のCa制御に関わっていると思われるsubunit eに関する研究:Foのサブユニットの一つであるsubunit e の34-65のアミノ酸配列が,筋肉のtroponin T等のCa^<2+>-依存性のtropomyosin結合部位の共通配列と高いホモロジーがあることが判明した.今年度は,ヒトのsubunit eのcDNA及び遺伝子のクローニングを行うと共に,subunit eの34-65のアミノ酸配列の各種ペプチドを合成,それらに対する抗体を作製,そしてCa^<2+>に依存してsubunit eに結合し活性を制御していると思われるtropomyosin様因子をマトリックスから探索中である.
|