研究概要 |
好気的呼吸鎖の末端酸化酵素によるプロトンポンプ機構を解明するためには、ヘム-銅複核中心における微細構造の理解が必要不可欠である。ミトコンドリア型シトクロム酸化酵素と機能・構造の両面で高い相同性を有し、分子遺伝学的取り扱いが容易な大腸菌シトクロムbo複合体(ユビキノール酸化酵素)を用いた解析に重点に置いた研究を行った。 1 野生型大腸菌シトクロムbo複合体及びその阻害剤(安定同位体によりラベルしたシアン、アザイド)結合型のEPR及びFT-IRスペクトルの解析によりこの酵素がミトコンドリア型シトクロム酸化酵素の非常に良いモデルであることを明らかにした。 2 ミトコンドリアシトクロムc酸化酵素の酸化型に^<13>CN,C^<15>N,^<13>C^<15>N,^<15>N_2N,^<15>NN_2といった阻害剤を結合させた微結晶を作製しその固体^<13>C/^<15>N-NMRスペクトルをCP-MAS法により測定した。現在測定結果を解析中である。 3 大腸菌シトクロムbo複合体の部位特異的アミノ酸置換変異体を作製しそのEPR、共鳴ラマン散乱及びFT-IRスペクトルの解析により複核活性中心付近の構造を推定した。その結果His106,His421がlow-spin heme,His419がhigh-spin hemeの配位子であることをそれぞれ明らかにした。またHis333,His334がCuBの配位子であることを明らかにした。 4 大腸菌呼吸鎖のユビキノール酸化酵素であるシトクロムbdとシトクロムbo複合体との差違をEPR、共鳴ラマン散乱及びFT-IRスペクトルの解析により明らかにした。
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