HIV-1アクセサリー遺伝子nefはウイルス遺伝子複製を抑制する遺伝子として報告されてきたが、しかし、近年では逆にHIV産生を助長する遺伝子という議論がなされ、統一したnefの役割はいまだ明らかではない。 一方、サル免疫不全ウイルス(SIV)による感染実験により、nef遺伝子がAIDS発症に必要不可決であることが報告された。筆者は、平成2-4年本補助金により、大腸菌、昆虫細胞系を用いてnef遺伝子産物の発現を行い、精製蛋白を抗原として、抗Nefウサギ抗体及びマウスモノクローナル抗体を作成し、HIV感染者血清中より抗Nef抗体、更にNef抗原を検出してきた。加えて、Nef抗原がヒト末梢リンパ球CD4陽性細胞の増殖を抑制することを示してきた。これらの結果は、Nef抗原が免疫異常を惹起する誘因の一つである可能性を示唆している。 今年度は、Nef抗原の非感染細胞、感染細胞への作用機序をより明瞭とするため、精製Nef蛋白とモノクローナル抗体を用い、Nef抗原の感染細胞表面への発現と、非感染細胞表面との結合を検討した結果、Nef蛋白の一部がLAV-1、HTLV-IIIB持続感染T細胞株Molt4、H9、M10表面に発現すること、また、Nef蛋白が非感染CD4溶性T細胞表面に結合することを示した。 現在、Nef抗原の細胞表面発現および結合ドメインを確定するため、ペプチドマップを含めた実験を進めている。
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