研究概要 |
研究室では研究代表者を中心として、年間1,000に及ぶ薬剤の抗HIV活性について検討してきた。その結果としてHIV-1に特異的できわめて活性の高い逆転写酵素阻害剤であるHEPT誘導体を発見、その臨床応用を目指して研究を発展させている。しかしながら,HEPT誘導体の性質として容易に薬剤耐性ウイルスの出現を許すことがわかり,今年度の本重点領域研究において、HEPT誘導体に対する耐性HIV-1の試験管内樹立と,そのウイルス学的および分子生物学的解析を試みた。その結果として,標準HIV-1株であるHTLV-111_Bおよび臨床分離株であるHE株より,それぞれにHEPT耐性ウイルスを樹立することに成功した。これら耐性株のウイルス学的性質は,それぞれの親株の性質とほとんど変わらないものの,薬剤に対する感受性では,HEPTを含めnevirapineやpyridinoneといった,いわゆる非核酸逆転写酵素阻害剤に対して全て交叉耐性を示すことが分かった。一方,AZTやDDIのような既存の抗体AIDS核酸誘導体に対しては耐性を示さず,これらの結果か,異なる種類の薬剤の組み合わせによる併用療法の可能性が示唆された。 さらに現在のところまでの分子生物学的解析では,HEPT誘導体に対する耐性HIV-1では,逆転写酵素の遺伝子変異によるアミノ酸の変化(^<103>Lys→Arg,^<108>Val→lle,^<181>Tyr→Cys)が認められ,今後はこのアミノ酸変化がHEPT誘導体に対する薬剤感受性とどのように関わっているを解明する予定である。 以上の研究成果を含め,研究代表者は今年度においてなされたHIVに関する研究成果を,日本ウイルス学会,日本エイズ学会,抗ウイルス化学療法研究会および国際ウイルス学会議(米国)で発表するとともに,数編の欧米科学雑誌において公表した。
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