研究課題/領域番号 |
05263223
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
程 久美子 (宇井 久美子) 日本医科大学, 医学部, 講師 (50213327)
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研究分担者 |
益田 佳織 日本医科大学, 医学部, 助手 (60202313)
宮田 雄平 日本医科大学, 医学部, 教授 (00014275)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1993年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | Drosophila / 中枢神経系 / 培養細胞株 / 細胞増殖 / Anti-HRP antibody / Acetylcholine / L-dopa / 細胞生物学 |
研究概要 |
ショウジョウバエ幼虫の中枢神経系(脳と腹側神経節)より継代培養可能な細胞株を樹立し、これらからクローン細胞株を16株得た。 これらの細胞株の中には、昆虫の神経特異的マーカーとして知られている抗HRP抗体に対する反応性を常に持っている株と、この反応性が昆虫の変態ホルモンを与えることによって誘導されるものがあり、形態的にも数種のものに分類できた。さらに、神経細胞として特徴づけるために神経伝達物質についてHPLCを用いて調べた結果、アセチルコリンとカテコールアミンの前駆体であるL-dopaを持っているものがあることがわかった。(カテコールアミン類は検出できなかったが、L-dopaは哺乳類の神経細胞において脱分極作用を示すことが報告されており、新しい神経伝達物質候補である可能性が示唆されており、ショウジョウバエ神経細胞における役割は興味深い。)これらの結果から、得られているクローン株はそれぞれ異なる特徴を持ついくつかの神経細胞種のグループを表わすものと考えられる。 神経細胞の細胞種間の相互作用を調べる目的で、異なる二種のクローン株の共存培養を行った結果、クローン株の組み合わせによって顕著な形態的変化が起こるもの、および細胞増殖の促進、または逆に阻害が起こるものがあることがわかった。さらにこれらの増殖調節作用は、メンブレンフィルターを介して二種のクローン株を培養しても同様の作用がみられたことから、細胞外へ分泌される物質によるものであると考えられる。これらの結果は同一の器官由来のクローン株の中に、細胞増殖に関しては、相反する作用を持つ物質を分泌しているものがあることを示しており生体における細胞増殖調節機構を調べるうえで非常に興味深いと考えられる。また、特に哺乳類の神経系細胞は、発生の早い時期に増殖し、増殖が停止し分化すると二度と分裂しない細胞群であるが、このような増殖停止の機構はほとんどわかっていない。したがってこの細胞増殖阻害物質の存在は特に興味深い。調べた数種の細胞株のうち、このような細胞増殖阻害作用を特に強く示す物質を分泌している細胞株はML-DmBG1であることがわかった。この物質は、自分自身には阻害作用を示さなかったが、他の中枢神経系由来細胞株には増殖を阻害する作用を示す。しかし、胚由来のKc細胞には増殖阻害作用を示さなかったので、この物質は神経系の細胞に特異的に作用するものかもしれない。この物質の性質を調べた結果、100℃,5分では失活しないが、100℃,20分では失活するものであること、キモトリプシン処理によって失活するものであることがわかった。さらに、分子量分画フィルターおよびゲルろ過により分子量を推定すると、60kd以上の比較的高分子のものであることがわかり、現在、この物質の単離を試みている。
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