研究概要 |
ウミウシは光と回転刺激により連合学習をさせることが出来るが、その結果分子量20kDのリン酸化タンパク質(cp20)の含有量が変化し、このcp20を視細胞に注入すると連合学習によって視細胞に起こるのと同様なKコンダクタンスの低下を引き起こすことが知られている。従ってcp20は連合学習と関係のあるタンパク質であると考えられている。そこでこのcp20と相同なタンパク質(cp20様タンパク質)をショウジョウバエから精製することを試みた。精製はcp20を認識する抗体を用いて行った。 cp20の抗体が認識するショウジョウバエのタンパク質は、ウミウシの場合と同様に可溶性分画に存在したので、ハエの頭部から可溶性分画を抽出して各種カラムにかけて精製した。ショウジョウバエの場合は材料が大量に入手できないので完全に精製するのは困難であることが判明したが,ある程度まで精製することができた。部分精製したハエのcp20様タンパク質の分子量はSDS電気泳動上で24kDであった。現在このタンパク質の部分アミノ酸配列を分析しているところである。cp20はGTP_<gamma>S結合活性とGTPアーゼ活性を示すことから低分子量Gタンパク質の一種であると考えられているが,部分精製したハエの分画にもGTP_<gamma>S結合活性が見られた。 また、ハエのcp20様タンパク質のKチャンネルに対する効果については、cp20様タンパク質が完全に精製されないと明確な回答が得られないが,部分精製した分画をラット小脳プルキンエ細胞に注入したところ、Kコンダクタンスが50%程度にまで低下した。そこでこの効果がcp20様タンパク質によって引き起こされたことを確認するために,この分画と抗体をインキュベートしたサンプルをプルキンエ細胞に注入してその効果を調べる予定である。
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