研究課題/領域番号 |
05263226
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 国立遺伝学研究所, 遺伝情報研究センター, 助手 (60183092)
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研究分担者 |
広瀬 進 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 教授 (90022730)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1993年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | ショウジョウバエ / escargot. / Zn フィンガー / 転写抑制因子 / DNA複製制御 / bHLH蛋白 |
研究概要 |
ecargot(esg)遺伝子による細胞の多倍体化阻害の分子機構の解明を試みて以下の成果を得た。 1)esg蛋白の強制発現によるesg突然変異の救済。 esgの弱い突然変異体においては腹部ヒストブラストが多倍体化し成虫の腹部表皮が欠損する。このesg変異体の幼虫期に熱ショックプロモーターによりesg蛋白を発現させると表現型が有意に回復した。回復の度合は熱ショックの頻度がたかまるに従って増大した。この結果は持続的なesgの発現がヒストブラストの多倍体化を阻害できることを示す。 2)esg蛋白による幼虫細胞の多倍体化の阻害。 次にesg蛋白が幼虫細胞の多倍体化を阻止できるかを調べるため、通常esgを発現せず高度に多倍体化する唾液線細胞でesg蛋白を持続的に発現させた。このような個体は唾液腺の発達が著しく遅れ通常ポリテン化する唾液腺染色体でのDNA合成も強く阻害されて大幅な生存率の低下が見られた。この結果はesg蛋白の持続的な発現は多倍体化のDNA合成を阻害する事を示す。 3)転写因子としてのesg蛋白。 esg蛋白はC2-H2タイプのZnフィンガー蛋白であり転写調節因子であると予想されている。このことを実証するための実験を行った。まずesg蛋白がin vitroで特異的に結合する塩基配列をゲルシフト法とPCRを用いて選択してGCACCTGT/Cのコンセンサス配列を得た。この配列に対するesgZnフィンガードメインの解離定数は2.7×10〓Mであった。このesgのコンセンサス配列はbHLH蛋白ヘテロダイマーの結合配列のE2コンセンサスと同一であった。次にesg蛋白がbHLH蛋白とが細胞内で相互作用するかをショウジョウバエの培養細胞で調べたところbHLH蛋白daとscのヘテロダイマーはesgコンセンサス配列を持つプロモーターを強く活性化するがesg蛋白はこの活性化を強く阻害した。またesg蛋白自身に転写活性化能はみられなかった。このことはesg蛋白がbHLH蛋白依存的なプロモーターのリプレッサーとして働くことを示している。 以上の結果はesg蛋白がbHLH蛋白による転写活性化を阻害することでDNA合成を阻害する事を示唆している。今後はesg蛋白が実際生体内でbHLH蛋白の作用を阻害するかを実証し、細胞の多倍体化においてesg蛋白と相互作用する因子の同定を通じて多倍体化のプロセスにおける制御ネットワークの解明に努めたい。
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