研究概要 |
絹糸腺の分化に関わりのある候補遺伝子群としてBm Dfd,Bm Scr,Bm fkh,Bm en,Bm Antp,POU-M1などをクローニングし,構造解析,同定を行って使用に供した.一方,絹糸腺特異的に転写されるフィブロイン遺伝子およびセリシン-1遺伝子の転写制御因子群のうちPOU-M1(SGF-3)のクローン化に続いてSGF-1,DBF-1,FF1を精製し,その部分アミノ酸配列の決定を行なっている. カイコの胚発生について,これらの遺伝子がどのように発現されるのかをin situ nylinidizationによって解析した.Bm Scr は絹糸腺が形成される前の時期に下唇節全体で発現される.興味深いことに,下唇節の一部が陥入して絹糸腺が形成され始めると,その部位からはBm Scrの発現が消失する.あたかもこれを相補するような形で,この陥入部位特異的にPOU-M1が発現されてくる.終末分化特異的遺伝子の一つであるセリジ-1遺伝子の転写制御因子が,絹糸腺発生の初期に何らかの役割を果しているらしきことは,大変興味ある観察である.このPU-M1は,絹糸腺成形につれて発現領域を拡大して行き,やがて,遅くともstage 29までには中部絹糸腺に限局された発現となる.形成途上の絹糸腺の後極部分にはBm fkhの発現があり,また,Bm enは始め前部および中部絹糸腺に発現した後,中部絹糸腺に限局されて行くことなどを明らかにした.
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