研究概要 |
Candida cylindraceaの遺伝暗号表ではコドンCUGはセリンに対応する。しかしCURのもう一方のコドンであるCUAについては,アミノ酸の対応は不明である。CUNのコドンボックスに対応するロイシンのtRNAとしては二種類単離されているがアンチコドンはともにIAGであり,通常のwobble ruleに従えば大腸菌などの原核生物と同様にイノシンがAも読み、CUAはロイシンとなるはずである。しかし,Munzらの遺伝学的解析から,真核生物ではイノシンはAを読めないことが定説となっている。また、ではイノシンではなく修飾されたUがAに対応するとされている。二つの可能性を検討するためにCandida cylindraceaの無細胞たんぱく質合成系を構築し,CUAを含む合成mRNAを用いてCUAの対応するアミノ酸を決定した。その結果Candida cylindraceaの全tRNA画分を用いた場合,CUAはロイシンに翻訳され,Candida cylindraceaにおいてCUAはロイシンであった。また、精製したIAGのアンチコドンを持つロイシンtRNAを用いても,CUAコドンがロイシンとして翻訳された。従って,酵母においてもイノシンはAともリボソーム上で塩基対を形成すると考えべきである。 すでに5SrRNAの配列に基づきカンジダ酵母の系統関係を作製し,CUGコドンがロイシン(グループI)→セリン(グループII)→ロイシン(グループIII)の経路で変化したことを示す結果を我々は得ている。本年度はEF-1αの塩基配列を決定し,それに基づく系統樹を作製した結果,このプロセスの正当性が確認された。CUNボックスに対応するtRNAのアンチコドンの一文字目はグループIとIIのものがIとCであるが,それに対してグループIIIに属するSaccharomyces cerevisaeでは未修飾のUのものしか存在しない.この未修飾のUの存在は遺伝暗号の変化のなごりと考えられる。
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