研究概要 |
1.ホウレンソウNiR cDNAを有する形質転換シロイヌナズナ植物の作成とそのNO_2同化能力の測定:ビアラフォス耐性遺伝子を選抜マーカーに、ホウレンソウNiR cDNAを持つプラスミド(いずれもCaMV35S promoter、NOS terminatorを持つ)を遺伝子導入して、ビアラフォス耐性株11系統を得た。うち3系統の再分化当代でのサザン分析の結果、導入したNiR遺伝子が認められた。しかし、これらの自殖後代を用いたサザン分析では、NiR遺伝子は確認されなかった。また、選抜マーカーをハイグロマイシン耐性遺伝子とした上記と同様のプラスミドを導入して、ハイグロマイシン耐性株2系統を得た。うち1系統のR_2世代でサザン分析の結果、NiR遺伝子の導入が確認された。現在、この系統の株を増やし、NO_2暴露によるNO_2同化能力の測定を実施中である。 2.シロイヌナズナNiR cDNAのクローニング:前年度シロイヌナズナNiR遺伝子全長を含むと考えられる4.4kbのゲノムDNA配列を得た。ホウレンソウNiR遺伝子と相同性(73%)を持つことによりこの配列の翻訳開始点上流と考えられる点から第4エクソン途中までが増幅されるプライマーを設計し、RT-PCR法によりcDNAを得た。塩基配列を決定した結果、ゲノミックNiR遺伝子の解析から予想される3つのイントロンと4つのエクソンを持つ構造がこのcDNAより確認された。今後、完全長のcDNAを得て、CaMV35Sプロモーターの制御下においたプラスミドを構築し、パーティクルガン法によるシロイヌナズナ形質転換個体の育成を行う予定である。 3.シロイヌナズナのNO_2暴露に対する遺伝子発現応答の解析:シロイヌナズナNR,NiR遺伝子をプローブとしてノザン解析を行った結果、両遺伝子ともNO_2暴露後15分〜30分で転写量の増加が認められた。その後、急激に転写量は低下し、以後、調べた24時間目まで低い値であった。NO_2暴露においても硝酸誘導と同様、NR,NiR遺伝子の発現誘導が起こることからNO_2が少なくとも一部は硝酸として取り込まれていることが確認された。
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