研究概要 |
本年度は隠れユニットを加えた相互結合型神経回路網を機能モジュールとし,これを多数用いてこれらを互いに連結した多重相互結合型回路網(マルチモジュールニューラルネットワーク,MMNN)の連想能力を定量的に検討した。そこでは,MMNNを用いて雑音パターンからの想起を行い,完全相互結合型モデルと結合数を同程度にした場合の想起能力を比較したところ,(1)記銘パターンが少ない場合にはMMNNの方が想起率が高いこと,(2)記銘パターンが増えてきた場合には想起率は低くなるが,隠れユニットを増加させることで,より高い想起率を得ることができることが明らかとなった。 さらに,このMMNNと従来から我々が提案している大規模櫛型ニューラルネットCombNET-IIを組み合わせたモデルを提案した.今回は,聴覚情報処理を想定して,入力刺激としては中国語音声信号を用いた.ここでは,すべての単字音声(400種)の認識をまず行い,その後,単語知識の助けを借りて単語を連想(認識)する.MMNNの学習単語数は4単字1単語となる単語100個である.連想実験には,4単字すべて正しいもの200単語,3単字のみ正しいもの800単語,2単字のみ正しいもの1200単語を用意した.本方式によれば,すべて正しく発音している場合には100%,1単字間違えて発音しても99%,2単字間違えても82%の認識率が得られた.本モデルは,まず感覚器官(聴覚)から入る刺激の特徴抽出(2次元メルケプストラム)を行い,その結果を低次情報認識回路網(CombNET-II)に伝達し,基本なる情報単位(単字)の認識を行い直交パターンを生成し,それを高次情報連想回路網(MMNN)に入力刺激として与え,知識モジュールに蓄積された情報との相互干渉により不完全な情報からでも最も関連のある上位概念(単語,都市名,地名)などを連想しようとするものである。
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