研究概要 |
今年度は特に以下の2つの点について解析した。 (1)学習課題遂行中の連合野ニューロン活動の自己相関の解析 側頭葉の先端部分(側頭極)ニューロンの一部(約40%)は、写真刺激の弁別・記憶課題遂行時に3-7Hzの周期的な活動を示す(Nakamura,Mikami and Kubota,1991,1992)。そこで、他の連合野領域で同様の振動現象が見られるかどうかを検討した。上側頭溝のニューロン542個、前頭眼窩回のニューロン370個につい調べた結果、32個(約5.9%)の上側頭溝ニューロン、10個(約2.7%)の前頭眼窩回ニューロンで2-16Hzレンジの振動現象を検出した。その一部のものは、写真刺激の種類によってその周波数を変えた。しかし、側頭極に比べて振動現象を示すニューロンの比率は少なく、また、振動現象も試行毎のばらつきが大きく不安定な傾向にあった。 (2)学習課題遂行中の連合野ニューロン活動対の相互相関の解析 今年度は、前述の視覚弁別・記憶課題の制御と複数ニューロン活動を同時取得するプログラム、同様の複数ニューロン活動取得機能を持つ視覚的注意課題の制御プログラム、複数ニューロン活動のデータ処理プログラムを開発した。また、これらのプログラムを用いて、視覚弁別・記憶課題遂行中の1頭のサルの前頭眼窩回、視覚的注意課題遂行中の1頭のサルの前頭眼野からニューロン活動を記録し解析した。これまでに、1本の電極から記録した8対の前頭眼窩回ニューロン活動および12対の前頭眼野のニューロン活動を解析した。その結果、3対の前頭眼窩回ニューロン、4対の前頭眼野ニューロンで片方のニューロンから他方のニューロンへの興奮性の結合を示唆するデータが得られた。
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