研究概要 |
真性粘菌Physarum polycephalumに誘導される熱ショックタンパク質HSP66の構造を知るために,精製したHSP66から得られたオリゴペプチドのアミノ酸配列を用い,DNAオリゴマーを作製し,それと粘菌のmRNAから逆転写によって合成したDNAを組み合わせて増幅させ,プラスミドに組み込んだものをクローニングして、その塩基配列を調べた。その配列をGenbankに登録されたものと比較したところ,これまでに報告されているストレスタンパク質とは相同性を示さず,HSP66が新しいストレスタンパク質であることが分かった。現在,HSP66の遺伝子構造を明らかにし,その発現調節のメカニズムを知るために,遺伝子DNAの単離と,その塩基配列の決定に取り組んでいる。特に上流領域の調節配列に着目し,実験を進めている。 また,HSP66の精製を進める過程で,HSP66とin vivoで複合体を作っているらしいタンパク質を発見した。このタンパク質は分子量約42,000で,HSP66とアクチンとの結合を調節していることが示唆され,現在,その精製に取り組んでいる。又、このタンパク質はアクチンとは性質が異っていることが分かっている。更に,HSP66とアクチンとの結合を阻止する別種のタンパク質の存在もつきとめたので,それらのタンパク質のcDNAのクローニングと塩基配列の決定を目ざし,それらのタンパク質の相互作用の詳細を調べることを予定している。
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