研究概要 |
可視光に感受性の大腸菌のミュータント(VisA,=hemH)では、ヘム前駆体のプロトポルフィリンIXが蓄積し、それに光が当ると多量の活性酸素が生成し、細胞に致命傷を与えると推察した〔Nakahigashi et al.Proc.Natl.Acad,Sci,USA,88,10520-10524(1991)〕。本研究はVisAミュータントより光に対して抵抗性を示す復帰株を単離して解析することにより、活性酸素や発生メカニズムや消去系を研究することを目的に行なわれた。 VisA遺伝子の大部分に欠失したミュータント(△VisA)からの光抵抗性の復帰株はVisA遺伝子以外の遺伝子の変異したものと考えた。実際それらの多くはhem合成系において,hemH以前のステップの遺伝子に欠損をもつものであり,プロトポルフィリンIXが蓄積しなくなったものであった。また、この種のミュータント(たとえばhemA^-)は,VisA遺伝子を導入してもgrowthの回復がみられない。この点に着目し△VisAの光抵抗株より,VisA^+遺伝子導入によってgrowthが回復するもの,すなわち,プロトポルフィリンIXが充分作られているが光に非感受性であるものをスクリーンした。約500株の独立に分離した復帰株より,8株の目的とする候補を得て解析を進めた。このうちLR437と名命した一株は小原のファージクローンの#132によって相補され,光感受性にもどった。#132の挿入DNA断片を調べ,5,2Kb EcoRI断片上に相補能があることがわかり,現在,塩基配列決定により遺伝子の同定を行なっている。一方トランスポゾンの転移によっても光抵抗性復帰株を得た。トランスポゾンのRmマーカーを指標にして解析を進めているが,現在までに,これらのミュータントは大腸菌染色体地図上の79分,67分,12分附近に存在する遺伝子の変異によるものであることが判明している。本研究課題遂行のために最も重要かつ必須のミュータントの分離に成功した。
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