大腸菌のストレス応答のひとつであるSOS応答に関する、あらたな分子機構の探索のため以下の研究を行った。今回購入した低速遠心機は研究の諸段階における必須の操作である細胞の操作・回収のために利用した。 1.大腸菌の一本鎖DNA結合タンパク質(以下SSBと略)の発現がSOS応答により誘導されるかについては、相矛盾する報告がなされて来ている。これについて、SSBタンパク質の合成レートを直接定量することを試みた。具体的にはSOS誘導試薬で処理した細胞を放射性メチオニンで標識し、SSBに対する抗体で沈殿するものにとりこまれた放射能を計測した。この結果、各種SOS誘導試薬により約二倍にまで誘導されることをあきらかにした。 2.この発現誘導の分子機構を明らかにするために、まず、遺伝子発現のどの段階が調節されているかを調べた。そのためにSSBタンパク質の合成レートと同時にmRNAのレベルを定量した。mRNAレベルの計測には定量的S1法を用い、定量ゲルの電気泳動に今回購入した電源を利用した。その結果SOS誘導処理後1時間では主として転写段階での、それ以降では転写と翻訳段階での誘導を見いだしたが、翻訳段階での発現誘導の程度は二倍以下の弱いものであった。
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