研究概要 |
DNA修復機構には、数種類の蛋白質が関与すると報告されており、これらのうちヌクレアーゼ相当の蛋白質は、損傷部位の除去過程を担うと考えられている。我々は、ラット肝クロマチンに結合して存在するMg^<2+>-依存性エンド/エキソデオキシリボヌクレアーゼを精製・単離し、その諸性質について多角的な調査・研究を進めてきた。これらの結果、本酵素が、紫外線あるいはシスプラチン損傷DNAに対して高い感受性を示し、その作用が損傷部位の認識・除去を担う蛋白質であることが明らかになり、本酵素のDNA修復系への関与が強く示唆された。また、本酵素の細胞核内での活性が、細胞培養時に培養液中に含まれるシスプラチン濃度の上昇に伴い増加し、1.5μM濃度下で、非投与時の約7倍の活性を示すことが明らかになった。現在、遺伝子としての構造および機能を明らかにするために、本酵素のcDNAをクローン化しつつある。一方、細胞核内に存在して、シスプラチン損傷DNAと特異的に結合する蛋白質について探索・調査した。これらの結果、シスプラチン損傷DNAは、ラット細胞核の0.42M食塩可溶画分中に含まれる蛋白質と複合体を形成すること、この形成に、紫外線損傷DNAが競合的に作用することなどが明らかになった。また、この複合体内には、少なくとも7種類のDNA結合蛋白質が確認され、これらのうち、22.5,23,96.5,112kDaの4種が強い結合能を、他の3種がこれに比べて弱い結合能を示した。さらに、この複合体形成能は、培養時に含まれるシスプラチン濃度の上昇に伴って増加し、特に、22.5,23kDa蛋白質との親和性が増大すること、この複合体内に上記Mg^<2+>-依存性エンド/エキソヌクレアーゼが存在することなどを確認した。以上の結果より、これら蛋白質が、シスプラチン損傷DNA以外の損傷DNAに対しても同様に作用すると考えられ、今後、損傷DNA-蛋白質,および、蛋白質間の相互作用を調査することにより、DNA修復機構のさらなる詳細を明らかにすることが可能になると考える。
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