研究概要 |
HTLV-Iのtax遺伝子を導入したトランスジェニックマウスでは高率に慢性関節炎が発症する。これまでに、関節局所でIL-1,IL-6,TNF-α、TGF-βなどのサイトカインの発現が発症前から昂進していること、またこれらのマウスはリウマチ因子や抗熱ショック蛋白抗体、抗II型コラーゲン抗体などの自己抗体を高率にもっていることを示した。本年度は自己抗体についてさらに検討したところ、抗体価は平均して高くなっているものの、各個体の持つ抗体価は抗原毎に異なっていることがわかった。また、発症マウスでも異なる抗原に対する抗体価が上昇しており、共通に抗体価が高くなっているものはこれらの抗原の中には認められなかった。また、これらのマウスでは、BSAや卵白アルブミンに対する抗体価も上昇しており、ポリクローナルなB細胞の活性化が示唆された。一方、II型コラーゲンで免疫したとき、ノントランスジェニックマウスでは発症しないにも拘らず、トランスジェニックマウスでは高率に関節炎が発症することがわかった。この時、コラーゲンに対する抗体産生が認められ、コントロールに比べて免疫応答能が高くなっていることがわかった。また、BALB/cとC3H/He,C57BL/6へそれぞれバッククロスすると発症率がこの順に低くなることがわかった。これらの所見は、免疫系の異常活性化が病態形成に関わっている可能性を示唆する。調べた限りでは共通に抗体価が高くなっている抗原は見つからなかったが、マウス毎に異なる抗体が発症に関与している可能性や、調べた以外に共通の自己抗体を持つ可能性も否定できない。現在リンパ球の移植実験やサイトカイン遺伝子のノックアウトマウスの作製を行っており、病態形成への免疫系の関与とサイトカインの関与の程度を明らかにする予定である。
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