樹状細胞の抗原提示能は、その機能的成熟の過程と深く関連していることが明らかにされている。しかし、これまでの研究で樹状細胞には貪食活性(phagocytosis)が認められないことから、粒子状抗原に対する免疫応答の誘導における機能には疑問がもたれていた。そこで、分化段階の異なる樹状細胞を比較的容易に調製可能な、骨髄細胞の培養によりin vitroで増殖分化が誘導された樹状細胞を用い、それらの食作用能と抗原提示機能を検討し、以下の結果を得た。 細胞の形態ならびに細胞内及び細胞表面抗原の発現から比較的未熟と考えられる樹状細胞は、抗体被覆ヒツジ赤血球を結合し、この一部を細胞内に取り込むだけでなく、ラテックス粒子をも貪食する活性を保持していることが示された。また、この活性はマクロファージに比べるとはるかに微弱であったが、細胞内には各種消化酵素活性が検出され、非特異的エステラーゼ活性も陽性であった。しかし、成熟した樹状細胞では、既に報告されているように貪食活性は認められず、細胞内消化酵素活性も低下し、非特異的エステラーゼ活性は消失していた。 このような未成熟な樹状細胞は、結核菌(BCG)生菌に対しても食作用能を発揮し、12時間の共培養により平均2個程度の菌体の取り込みが認められると同時に、その後の培養により細胞表面MHCクラスII抗原の発現量の増加も観察された。そして、これらの細胞は、in vitroにおいては特異的T細胞の増殖応答を誘導し、また生体内に接種すると所属リンパ器官でBCG特異的T細胞の活性化を誘導することが示された。 以上の結果より、樹状細胞は未熟な段階では貪食作用を発揮し、感染免疫応答においても抗原提示細胞として機能していると考えられる。
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