研究概要 |
我々は、これまでにヒト基本転写因子TFIIFのcDNAクローニングによる一次構造の解析、更にはdeletion mutantを用いたTFIIF活性ドメインの解析を行なってきた(Yonaha et al.NAR 21:273-279,1993)。当該年度において、次の点を明かにした。HeLa TFIIFをin vitroでアルカリフォスファターゼ処理すると、RAP74は、SDS-PAGE上、大腸菌で発現させたRAP74(r74)と同じsizeになり、RAP30には変化がなかった。この脱リン酸化型のIIFは、in vitro転写活性およびmRNA伸長促進活性が低下しており、これは、RNA polymeraseIIとの結合活性が低下するためであった。TFIIFは、large subunit(RAP74)とsmall subunit(RAP30)とからなるheteromerであるため、どちらのsubunitの脱リン酸化がこれらの効果をもたらすかを,nativeなサブユニットとrecombinantなサブユニットとをもちいて、それぞれ等モルの条件でハイブリットIIFを作製することで解析した。その転写開始活性は、nativeどうしのハイブリットが最も高い活性を示し、recombinant IIFは10-20%の低い活性であった。一方、nativeとrecombinantとのハイブリットであるn30/r74は、recombinant IIFと同レベルの低い活性であったが、r30/n74の組み合わせでは、native IIFに匹敵する効率良い活性が再構成された。また、minimal promoter sequenceと、TBP,IIB,IIF,PolIIで形成される転写開始複合体(DBPolF複合体)をnative gel electrophoresisで測定したところ、脱リン酸化IIFは、その形成能を低下させること、ハイブリットIIFのうちr30/n74は、n30/n74に相当する活性を示すがn30/r74はrIIF同様の低い活性しか示さなかった。これらの結果はsuboptimalな量のIIFで認められ、saturateした量では差がなかった。以上のことから、非修飾型IIFは、転写開始、mRNA伸長促進、DBPolF複合体形成の活性をもつが、その強さは、翻訳後修飾によって制御されることがわかった。特に、RAP74のリン酸化は、TFIIF活性をup-regulateすることがわかった。一方、RAP30はin vivoでリン酸化されているが、その意義については明かにできていない。しかしながら、rIIFも、飽和量を用いると十分なDBPolFをつくることから、RAP30のPolII結合にはその修飾は必須でないと考えられた(Kitajima,S.et al.manuscript in preparation.)。
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