研究概要 |
マウス未分化テラトカルシノーマ細胞(以下、EC細胞と略す。)におけるモロニー白血病ウイルス(Mo-MuLV)の転写抑制因子ELPについて解析し、以下の結果を得た。 ELP結合配列であるTCAAGGTCAは、核内受容体結合配列にあるAGGTCAを含む。Mo-MuLV LTRにみられる2ヵ所のELP結合部位は、それぞれRARとTRの結合部位でもある。これよりELPは、核内受容体に競合することで転写抑制をすると思われる。それゆえ、TCAAGGTCA配列をもとにRARが結合し得ない、あるいはし得る複数の標的配列を合成し、これについてCAT assayを行ったところ、RARの標的になり得ないELP結合配列は転写抑制されない一方で、RARが結合可能なものはELPにより転写抑制を受けることが示された。このように、ELPによる転写抑制の一つの機構には、核内受容体に対する競合があるものと思われる。 ELP遺伝子のゲノムの解析については、まずEC細胞のcDNA libraryを検索したところ、ELP遺伝子には4種類のisoformの存在が明らかになった。genome配列を分離し、これに4種類のcDNAと対応させた。その結果、ELPは8つのexonよりなり、転写はexon1,2,3から開始される。遺伝子のプロモーター領域はCAT assayよりexon1の上流とintron1にそれぞれあることが明らかになった。intron2にはプロモーター活性がない。3つの転写開始点と、exon6とexon8にある2つの転写終結点の組み合わせにより、上記の4種類のmRNAができる。これらのmRNAは、N末端の長短とC末端の転写活性化部位の有無で異なる3種類の蛋白をコードする。CAT assayでしらべたところ、これら3種類の蛋白は転写活性化部位の有無により、それぞれ転写活性化因子および抑制因子として機能することが明らかになった。
|