研究概要 |
ショウジョウバエのDNA複製酵素であるPCNAおよびDNAポリメラーゼalpha遺伝子のプロモーター上流に共通の制御配列DREを見い出した。DREに特異的に結合する86kDaのポリペプチドの2量体よりなる転写因子DREFを見い出した。DREFを精製し、部分アミノ酸配列に基づいてcDNAと遺伝子を単離した。DREFのcDNAは731アミノ酸残基よりなる83kDaのタンパク質を支配する。DREFのN端1/3は塩基性アミノ酸に富み、中央1/3は酸性アミノ酸を多く含む。また、両者の間にはプロリンに富む短い領域が存在する。大腸菌で産出したDREFを用いて、塩基性アミノ酸に富む領域(46-270aa)がDREへの結合ドメインを含むことを証明した。発生過程におけるmRNA量の変化が複製遺伝子のそれとほぼ一致することを見い出し、DREF遺伝子発現量の変化がDNA複製遺伝子の基本的な発現にとって重要性を持つことを示唆した。組み替え体DREFを抗原にもちいて、各々異なるエピトープを認識する4つのモノクローナル抗体とウサギ抗DREF血清を得た。また、DREF遺伝子の遺伝的および生理的調節機構を解明するために,DREF遺伝子の転写制御配列の解析を進めている。なお、DREF遺伝子の染色体座位は30F〜31Aである。一方、PCNA遺伝子のプロモーターとその上流域を含む配列をlacZ遺伝子と連結し,多数の遺伝子導入ハエを作成し、発生段階特異的な発現にとって必要な制御配列を明らかにしつつある。卵巣における発現に必須であるのは転写開始点より上流86bp以内の基本プロモーターであり,DREはそれを増強する。初期胚での転写には,DREが必須となり,さらに幼虫期での発現には,DREおよびそのさらに上流50bpまでにある第2の調節配列が必要であることがわかった。
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