研究概要 |
平成5年度の研究計画に従って構造特異性を有する糖脂質糖鎖プローブの開発・体系化についての研究を進め、前口系動物の3門,5類(綱)に属する動物の糖脂質を調べた。 ●甲殻類の中性糖脂質:昆虫類由来のMannose含有Amino-CTH(GlcNAcβ1-3Manβ1-4G1cβ1-Cer)を免疫源として得た抗体を用いて,2種類の甲殻類(南極オキアミ,テナガエビ)にも同糖脂質の存在することを明らかにすると共に,テナガエビの凍結切片の免疫染色効果より,同糖脂質が触角腺,食道内壁及び鰓に特異的に局在することを示した。●倍脚類(周期キシャヤスデ):糖鎖の短い中性糖脂質(ceramide mono〜trisaccharides)はArthro系Man脂質であることを,更に,ceramide trisaccharideとしてManβ1-4(Fucα1-3)G1cβ1-Cer構造を有する新しい糖脂質を,発見し,報告した。●貧毛類(ミミズ):Pheretima属の糖脂質糖鎖の多様性から種間相違性を調べたが,中性糖脂質として新しく3種類のNeogala系G1c脂質と2種類のNeogala系Man脂質の構造を決定した。又,リン糖脂質として,choline-phosphateを含有した2種類の両性イオン型糖脂質を単離し,それらの構造を決定した。更に,既に貧毛類から単離している糖脂質の中で,5種類の糖脂質(3種類の中性糖脂質と2種類のリン糖脂質)について,それらに対する抗血清の調製を行い,得られた抗体の精製と抗原特異性を明らかにして報告した。●多毛類(イトメ):中性およびリン糖脂質を明らかにした。又,酸性糖脂質の中にinositol-phosphateを含有する一群の新型糖脂質の存在することを認め,現在,それらの構造決定を行っている。●線虫類(ブタカイチュウ):中性糖脂質は,Arthro系Man脂質であることを決定した。更に,酸性糖脂質画分にsulfatide及びgangliosideのいずれでもないinositol-phosphateを含有する新型の酸性糖脂質を見いだして,現在その構造を,Ga1-Ino-P-Cerと推定している。
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