研究概要 |
シャーガス病の病原原虫Trypanosoma cruziの感染型トリポマスチゴートの表面には、この原虫特有のシアル酸転移酵素トランスシアリダーゼ(TS)が存在する。この酵素は、糖複合体にalpha2,3結合したシアル酸を切断して原虫表面の末端ガラクトース受容体へとシアル酸を転移するユニークな酵素であり、シアル酸を受け取った分子は宿主細胞との接着、侵入に重要であることが示されてきている。 今年度はまず、単離していた2つの遺伝子、生成物に酵素活性のあるものとないもの、の比較を基にいくつかの変換体を作成し、活性の有無に関与している置換はそのうちの一ケ所のみであることを明かにした。その置換部位のアミノ酸は、ごく最近結晶構造が解析されたS.typhimurium LT2由来のシアリダーゼ(SA)のおいては、シアル酸の切断される部位であるC1,C2と相互作用していることが示され非常に興味ある部位である。 さらに、T.cruziの細胞侵入に際して、宿主細胞表面のシアル酸も関与しているとの報告が最近なされ、TSファミリーが酵素活性の有無とは別に、シアル酸と結合するレクチンとして機能している可能性も出てきた。そこで活性のないもの、あるいは作成した幾つかの変換体が、活性型と基質を競合して阻害するかを調べたが、そのような結果は得られなかった。個々の分子の立体構造、あるいは結合が非常に弱い可能性を考慮して検出方法を考える必要があることが示され、さらに検討を加えているところである。
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