研究概要 |
各種スフィンゴ脂質を化学修飾して糖鎖プローブを作製し、それを用いた光親和反応によりヒト体液および癌細胞に存在するスフィンゴ脂質結合蛋白を検出した。更に、異なる糖鎖プローブによりこれら結合蛋白の一部を捕捉して免疫学的に同定した。即ち、GalCer,GM3、スルファチド(SO_4-3GalCer)およびスフィンゴミエリンのリゾ体をアジ化サリチル酸誘導体とし、それを放射標識後、ヒト脳脊髄液、血清および腎細胞癌細胞の抽出液(何れも未脱脂試料)とともに光照射したところ、用いた糖鎖プローブおよび生体試料に共通して66,36,28kDaの蛋白質が標識された。一方、ヒト血清を脱脂し、更にリポ蛋白質を除去して再度光親和標識したところ、上記蛋白質とは異なる成分(3バンド)が検出された。このことは未処理試料の標識された蛋白質がリポ蛋白質であることを示唆した。それを証明するため、上記リゾ脂質のビオチン化物を合成し、それを試料と混和後、固定化アゾジンで捕捉して抗リポ蛋白抗体により免疫染色したところ、36,28kDaはそれぞれアポ-E、アポ-A-Iと同定された。66kDaは脱アポ蛋白処理血清画分のイオン交換クロマト後の光親和標識からアルブミンの他にコレステロールエステル転移蛋白(Mr.=66kDa)である可能性が高い。 スフィンゴ脂質とリポ蛋白質の結合はすべて非特異的であり、体液や培養細胞のスフィンゴ脂質に特異的な結合蛋白質を検索するにはこれらリポ蛋白質を除去する必要がある。
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