研究概要 |
我々の作製したζ欠損マウスの解析から、ζ鎖は正常レベルのT細胞受容体(TCR)の発現に必須であり、またT細胞の正常な分化および機能の発現に重要であること、このζ鎖の役割は他のζファミリー分子、ηおよびFcRγでは代替できないことが示された(EMBO J.12:4357,1993)。一方、小腸上皮間T細胞のうちTCRγδ^+細胞はζ欠損マウスにおいても正常レベルのTCRを発現しており、これらのTCRはζではなくFcRγと会合していた。表皮および子宮・膣上皮間に存在するγδ^+T細胞もζ欠損マウスにおいても正常レベルのTCRを発現することから、これらの上皮間γδ^+T細胞は共通してFcRγを含むTCRを発現していることが示唆された(J.Exp.Med.179:365,1994)。またη鎖の機能に関しては論議のあるところであったが、η欠損マウスの解析から、η鎖はζ鎖に比較して何ら特異的機能は持っていないこと、TCRとの会合においてはζ鎖より効率が悪いことが示された(EMBO J.1157,1994)。 さらにζ,ηダブル欠損マウス、FcRγ欠損マウスを作製するための相同組換えベクターを作製し、ES細胞に導入することにより、相同組換えを起こしたクローンをそれぞれ5クローンおよび2クローン得た。これらのES細胞クローンをC57Bl/6マウス胚盤胞に注入することによりキメラマウスを作製した。現在上記の遺伝子欠損マウスを得るためにこれらのキメラを交配中であるが、FcRγに関しては生殖細胞系列における相同組換え変異が確認された。今後、これらのマウスを用いて免疫系、ひいては血球系細胞の発生および機能におけるζファミリー分子の個体レベルでの総合的解析が期待できる。
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