研究概要 |
1.これまでにcDNAクローニングにより一次構造を明らかにしたシステインプロテイナーゼ(オリザインα,β,γと命名)のうち,OZ-αとβは一次構造上は互いに高い相同性をもつタンパク質であるにもかかわらず,発現時期,GA_3による誘導の異なることから,OZ-αとβの発現制御機構を明らかにする目的で遺伝子構造の解析を行った。イネ遺伝子ライブラリーより各々のcDNAを用いてOZ-αについては約4.8kbp,OZ-βについては約5.7kbpのクローンを得,塩基配列を決定した。その結果,両遺伝子には成熟タンパク質をコードする部分に3つのイントロンが同一の箇所に挿入されており,なお,OZ-αにはC末端延長ペプチドの部分にも1つのイントロンが存在した。成熟タンパク質部分の挿入位置はアクチニジンの場合と同一で,これが進化的に互いに近縁であることが示唆された。 2.プロモーターの配列を検討した結果,OZ-α遺伝子には-142bpに5'-AATACAAATTC-3'というオオムギα-アミラーゼ遺伝子のGA_3応答因子と類似の配列が存在した。このことからOZ-αはα-アミラーゼと共通の機構によってGA_3による誘導を受けていることが推測された。 3.OZ-βの遺伝子には上記と類似の配列は見られず、これまでに報告されたものとは異なる機構を有している可能性があると考えられたので,シス因子の解析を行った。OZ-βのプロモーター約700bpとβ-グルクロニダーゼ(GUS)の融合遺伝子を作製し,イネプロトプラストに導入した。GUS活性のトランジエントな発現をしらべたところ,導入後2日目に活性が最大となり,さらにこの活性はGA_3添加で2〜3倍に上昇した。プロモーター部分の5'-欠失変異体を用いて同様な実験を行った結果,-316〜-219bpの領域にGA_3による誘導に関与する配列の存在が示唆された。
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