研究概要 |
脊椎動物において,椎骨と肋骨からなる中軸骨格は体節から発生する.胸部にはよく発達した肋骨があるが,頚部や腰仙部では,それは椎骨の小さな突起となっている.本研究では,このような形態の部域差を起こさせる機構に,ウズラ-ニワトリ キメラ胚を用いた実験発生学的手法を用いて迫ろうとしている.体節は,その形成直後から,将来形成する骨格の形が決定されている(Kienyら,1974)が,この決定は,軟骨原基となる,予定椎板領域のみならず,予定皮筋板領域にも決定されている.(Aoyama & Asamoto,1988).このことは,骨格の形態形成が,決定を受けた軟骨前駆細胞自身の自律的な発生によってなされるのか,それとも,真皮や筋の前駆細胞に誘導されて形成されるのか,という疑問を引き起こす. この疑問に答えるため,胸部体節の断片を,腰部体節の内側,内部,および表皮下に移植した.移植部位が表皮から離れるに従って,移植片由来の細胞から軟骨が形成される割合が増える.従って,もし移植細胞が軟骨のみを形成したときにも肋骨形成が見られたならば,肋骨形成は,軟骨前駆細胞自身の形成能によるものといえる. 得られた結果を要約すると:1)胸部体節断片は,内側外側軸に関して,移植部位に相当する中軸骨格の部分を形成する.2)胸部体節の皮筋板も椎板も腰部体節に肋骨形成を誘導することはこれまでのところなかった.3)肋骨は胸部体節由来細胞によってのみ形成されるが,その際に胸部皮筋板の存在が必要かどうかははっきりしない.これをはっきりさせる目的で,現在,真皮や筋はすべて宿主由来であり,肋骨を形成する軟骨のみが移植片由来となるようなキメラ胚を得ようとしている.
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