研究概要 |
送電線の高圧化や電気機器の高出力化の傾向の中で,我々の日常生活空間に,かつてない強度の電磁界が現れるようになってきた。最近これらの電磁環境が生体に対しストレス性を有していること,生体の日周リズムに影響を及ぼすことなどが知られ,その解明が急がれている。欧米では既に多くの研究が始まっているが,現在のところ影響を発現する生体曝露量の閾値や条件はほとんど未知に等しく,研究者間でも統一された見解はみられない。そこで、人工電磁環境の生体作用の定量的解析をめざし、生体曝露量の数値解析法ならびにストレス反応の定量的評価法を開発するとともに、人体や実験動物に対しその適用を試みた。 前者の生体曝露量の数値解析法により、空間イオン存在下でも、人体のような不規則な形状を有する生体に対して3次元解析が可能となった。これにより、これまで2次元の定性的解析にとどまってきた生体曝露量評価を、3次元による定量的解析に進歩させることができた。また後者のストレス反応の定量的評価法により、家兎の生理反応を無侵襲・無拘束的にとらえるだけではなく、その反応を定量化することが可能となった。実験動物を用いて曝露実験を行い、その反応を定量化した。数値解析により求めた頭部集中電界強度の変化は、これまでの推測どおり、家兎の姿勢変化にともなう閾値の変化と良く一致するものであった。これらの結果から、両方法を総合することにより、人工電磁環境の生体作用、特にそのストレス性を定量的に解析する方法が得られた。これらの手法は、生体影響が報告されるたびに論争となる再現性の問題や安全基準値の問題に対し、有効な解決手段を提供するものと考える。
|