研究概要 |
本研究では、有機金属化合物として有機水銀(塩化メチル水銀、塩化エチル水銀、塩化フェニル水銀)を用いた。3価コバルトイオンでこれらを酸化分解し、その結果生成した水銀イオンを冷蒸気発生/原子蛍光法によって定量することで分解率を求める、フロー分析システムを開発した。3価コバルトイオンは極めて強い酸化剤ではあるが、非常に不安定で保存が難しいことから、同イオンを2価コバルトイオンの電解酸化により閉鎖系内で連続的に発生・供給することが可能なフロー式の電解装置を製作し、システムに組み入れた。3価コバルト発生のための電解電流やフローシステムにおける各試薬の流速等の諸条件を最適化したのち、有機水銀を完全に分解するために十分な条件について検討した。対照として、水銀量として同濃度(10ppb)の塩化第二水銀溶液を用い、これから得られる原子蛍光強度を100%として、各有機水銀の分解率を測定したところ、95℃以上の加温条件下で3価コバルト処理を行うことにより、反応コイル長を3mと短くしても、ほぼ100%の分解率が得られることがわかった。他の有機物が共存する場合、それが3価コバルトイオンを消費して、有機水銀の分解が妨害されることも予想されたが、グルコース、グリセロールおよびシステインの300ppmまでの共存は、特に影響を与えなかった。水銀の還元気化を妨害することが知られている各種無機イオンについては、共存許容濃度は次のとおりであった:Cl^-,3000;Br^-,1000;S_2O_3^<2->,300;S^<2->,30;I^-,3ppm。本法を、大学排水および河川水への有機水銀の添加回収試験に適用したところ、いずれの試料においても、ほぼ100%の良好な回収率が得られ、本法は実試料の分析に十分に応用可能であると結論した。
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