研究概要 |
10種のハロゲン化有機物質によるL-929細胞のコロニー形成能に及ぼす影響を調べ、既に行ったHL-60細胞の生存率、マクロファージの貧食能、肝実質細胞のLDH遊離及びグルカゴン応答能への影響と比較した。フェノール誘導体(2,4,6-トリブロモフェノール、2,4,6-トリクロロフェノール)は全ての哺乳動物細胞に顕著な障害を与えた。しかし、ベンゼン誘導体(1,3,5-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリブロモベンゼン)およびプロパノール誘導体(1,3-ジクロロ-2-プロパノール、3-クロロ-1-プロパノール)では、たとえ基本構造が同じでも細胞によっては毒性の発現する程度が大きく異なり、化学物質の構造とその毒性との間には必ずしも相関性は認められなかった。 L-929細胞のコロニー形成能が比較的多くの物質に対して高い感受性を示したため、この細胞のDNA合成能およびタンパク質合成能への化学物質による障害性を放射性前駆物質(^3H-チミジン、^<14>C-メチオニン)取り込み阻害試験により検討した。コロニー形成を阻害した1,3,5-トリクロロベンゼン、2,4,6-トリブロモフェノールおよび2,4,6-トリクロロフェノールはDNA合成、タンパク質合成のいずれも著しく低下させ、細胞の基本的機能が障害を受けること、およびその障害が非可逆的で修復されないことが示唆された。一方、4-クロロレゾルシノール、1,3-ジクロロ-2-プロパノールおよびトリクロロ酢酸ではコロニー形成が阻害されたにもかかわらず、DNA合成能、タンパク質合成能への障害は比較的少なく、細胞の分裂段階における障害が推定される。 今後、他の細胞機能障害性をより詳細に調べ、毒性パターンを比較することにより、化学物質の毒性の特徴が理解されれば、細胞毒性試験が水環境保全への包括的指標として適用できるものと期待される。
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