研究概要 |
人体におけるダイオキシン類(PCDDs、PCDFs)の挙動を明らかにする目的で、ダイオキシン類に対して高感受性の9週令雄C57BL/6と低感受性のDBA/2マウスに都市廃棄物焼却場飛灰から抽出、精製したPCDDsおよびPCDFs混合物を10-2〜10mugTEQ/kgの割合で経口投与し、投与後24日目まで経時的に肝臓における異性体蓄積量および薬物代謝酵素活性を検討した。その結果、1)両化合物ともに蓄積する異性体の大半は毒性の強い2,3,7,8-塩素置換体であり、いずれも低感受性のDBA系よりも高感受性のC57BL系で若干高い残留性が認められること、および2)2,3,7,8-TCDD、2,3,7,8-TCDF、1,2,3,7,8-PeCDF、OCDDおよびOCDFは、他の5塩化〜7塩化異性体に比べて肝臓内蓄積量が低いことが判明した。従って、マウスは人間と異なった代謝経路を有することが示唆された。また、薬物代謝酵素測定結果から、7-Ethoxyresorufin O-deethylaseおよびDT-diahoraseは、ダイオキシン類の代謝排泄作用よりも、毒性本体となる代謝成績体の産成に、Biphenyl hydroxylaseは代謝排泄作用に関与していることが示唆された。 一方、毛髪中のコプラナーPCBsを含めたダイオキシン類の微量分析法を確立し、同一人の毛髪を検討した結果、毛髪中に蓄積する成分組成は人体脂肪組織中のものに類似していることが明らかとなった。従って、毛髪がダイオキシン類の人体汚染評価の指標試料となりうることが判明したことから、本法は今後の人体影響評価を実施する上で、有力な手法になるものと考えられる。
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