研究概要 |
本研究は,破損形態の観察,変形挙動の測定および力学解析の3段階から構成される. 第1段階はベルト破損形態の観察である.まず,実車走行した歯付ベルトの損傷形態を観察し,ベルト破損機構解明のための基礎資料とした.つぎに,モデル化したベルト走行疲労試験とその破損状況の観察を行い,ベルト損傷の発生・進展機構の詳細について検討した.その結果,歯付ベルトの破損は,き裂の発生・進展という,力学的な破損形態をとり,さらに,通常の試験条件下では,心線内部のファイバーを撚って作製したストランドのはく離として生じることを明らかにした. 第2段階では,ベルトとプーリの噛み合い状況をモデル化した装置を用いて,ベルト各部に生じる変形量の把握を行った.また,発生した屈曲やせん断などの各変形ごとにモデル化した破壊試験を行った.その結果,ベルトの破損は心線に屈曲が繰返し負荷されることによって生じることがわかった. 第3段階では,ベルト破損機構解明のための力学解析を行った.ベルト心線に損傷を発生させる屈曲の大きさが,ベルト張力,プーリ歯ピッチ,あるいはプーリ歯先円直径などとどのような関係にあるかを解析的に検討した.また,その結果に基づいてベルト破損寿命の新しい整理法を提案した.その結果,ベルトに繰返し負荷される曲げモーメントの大きさによってベルトの破損寿命がよく整理できることがわかった. これらの検討を通して,歯付ベルトの強化を考える際には,まず心線内部の耐屈曲疲労性の向上から考えるべきこと,およびベルト耐久性の評価にはベルト張力よりもベルト歯歯元での屈曲の大きさで行うべきこと,などの重要な知見を得ることができた.
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