研究分担者 |
佐野 弘好 九州大学, 理学部, 助手 (80136423)
角和 善隆 東京大学, 教養部, 助手 (70124667)
山北 聡 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (80210342)
石賀 裕明 島根大学, 理学部, 助教授 (80183002)
武蔵野 実 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10027716)
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研究概要 |
ペルムトリアス紀境界はこれまで浅海の堆積物において検討されてきた.本テーマの遠洋性堆積物の検討は逆に,海水準変動の影響による浸食作用や,陸源の堆積物の混入によるノイズの影響を受けないことが特徴である.総合研究をとおして,1)生層序学的,地球化学的検討からは境界における生態系の変化と海洋環境の変化が解明されつつある.ペルム紀末はイオウ安定同位体の検討からは,遠洋域においても還元的な海洋環境へと変化していったこと,これは生物の生産性からすれば衰退ではなくむしろ,基礎生産は高くなっていると推定される.還元的な底質は従来からの考えのように停滞した環境を示唆するものではなく,むしろ急速な有機物の生産によってもたらされたと推定される.2)このような有機炭素の濃集によって地球環境は変化していった可能性がある.したがって,基礎生産量を担う生物の働きもペルム-トリアス紀境界では大きな働きをしていたといえる.事実,イオウ同位体からはこの有機物の堆積時は海洋は酸化的であり,活発な循環が生じたと推論される.3)一方,トリアス紀は地球化学的には大陸の平均化学組成はペルム紀に比べれよりいっそう成熟していったといえる.境界にはさまれる有機質泥岩はTi,Th,Zrなどの元素に富んでおり,大陸における洪水玄武岩の影響を反映している可能性がある.本総研をとおして,従来のペルム-トリアス紀境界についての考えとは異なる知見が提示され,それらは新しい研究テーマへと進発展しつつあるといえる.
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