研究課題/領域番号 |
05351006
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研究種目 |
総合研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済理論
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
永井 義雄 一ツ橋大学, 社会科学古典資料センター, 教授 (40019815)
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研究分担者 |
音無 通宏 中央大学, 経済学部, 助教授 (20041105)
有江 大介 日本福祉大学, 経済学部, 助教授 (40175980)
井上 琢智 関西学院大学, 経済学部, 教授 (30104269)
千賀 重義 横浜市立大学, 商学部, 教授 (20036057)
山下 重一 国学院大学, 法学部, 教授 (30052070)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1993年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | 功利主義 / 環境倫理 / 社会的調和 / 分配的正義 |
研究概要 |
現代的観点からすれば、G.E.ムーアによる功利主義批判はあまり重視するに当たらないという見解に、われわれは一致して到達した。かれの功利主義批判は今世紀の初めにおいてこそ、意味を持ったけれども、19世紀的な価値基準が崩れれば、ムーアの批判は目的を達して役割を終えたのである。 しかし、功利主義は19世紀的価値基準の重要な中枢を担ってはいたけれども、その意義を20世紀において失ったわけではない。功利主義が社会的調和の原理であった限りで、それはすでに19世紀初頭から存在したロマン主義からの批判に十分に耐えるものであった。ミルにおける快楽の質的区分の登場は功利主義が諸批判に対して適応する能力の高いことを示したものと、われわれは評価する。社会的調和の原理として功利主義を捉えない限り功利主義の本質は捉えたことにならない。単なる個人の行動原理としてしか功利主義を捉えないところにムーアを初めとする諸批判の誤りがある。 それより、われわれが注目したのは、功利主義の原理的徹底性である。快苦原則の適用において、功利主義は身分はもちろん、人種、性別を問わないだけでなく、動物をさえ差別しなかった。この原理的徹底性は、19世紀的限界をはるかに越えている。このことが功利主義を今日的にしている。同時に、社会的調和の思想は今後さらに重要性を増すであろう。とりわけ、福祉国家構想を練り上げていく上で、功利主義の諸観念、例えば、生存、豊富、安全、平等という基準は、自由とともに依然として重要な指標であり続けるであろう。この二つの原則のもとでの個人レベルにおける幸福の追求をめぐる倫理が功利主義倫理として論じられるべきである。これは功利主義倫理が必然的に環境倫理を含むことを意味する。
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