研究概要 |
高低温の電子が磁場に沿って移動し入れ替わることで発生するプラズマのエネルギー輸送(熱流)は電位分布の形成とも密接に関連した普遍的な物理現象である。この現象を制御可能な状態で実験的に検討し,その物理機構を明らかにすることが課題である。実験はタンデムミラー装置(ガンマ10)の西エンド部において行った。熱流制御には,2.45GHzマイクロ波共鳴加熱を用いるThermal Dike(TD)と,同装置の東西両エンドプレート前面を金属メッシュで覆い負電位にバイアス(MB)する機構を作った。端壁から放出される低温の二次電子による環流に対して,TDはミラー効果によりMBは静電斥力により,追い返して対流の循環を断ち切ろうとするものである。標準的なタンデムミラープラズマに対して2つの制御法を別々あるいは同時に重畳して,端壁に流れ込む熱流及び高温電子の粒子束の計測を行った。その結果は次の通りである。 MBにより端壁の浮遊電位が大幅に深くなり,この電位障壁を越えて流入する高温電子の粒子束はほぼ半減し,損失電子の温度は増加する。イオンの粒子束は高温電子束に比べてはるかに小さく,端壁の熱負荷が電子損失により支配される状況は変わらないため,熱負荷はほぼ半減すると評価される。この傾向は熱電対アレイ及び赤外線カメラによる端壁の温度計測によっても確認され,熱流制御にMBが有効であることが示された。[一部はPhys.Plasmas,Vol.2(1995)pp.352-354.に報告。]しかし,粒子計測から期待されるよりは温度変化は小さい傾向にあり,熱流計測法の更なる検討のほか別経路の輸送の可能性も含めて更に実験する必要がある。 TDを単独で加えると端壁の電位は約10%深くなるが,電子束は必ずしも減少しない。端壁温度は減少の傾向を示すが,プラズマ条件によってはTDで増加することがある。この観測から,高温側電子の輸送が加熱により変化を受けることが新たに認識された。[Phys.Plasmas,Vol.1(1994)pp.3986-3995.]加熱応答関数と電位形成モデルとを組み合せた解析によれば,TD-ECRHにより高温電子の約半数が一旦Yushmanov捕捉粒子となり,多重加熱の後にかなりの部分が端壁に逃げて熱流が増加すると解釈される。[プラズマ核融合学会第12回年会23aC3報告,Phys.Plasmasに投稿準備中。]検討の結果,磁場分布を共鳴域で整形することによりTDの利点をさらに顕著にできる見直しを得た。
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