研究概要 |
脳内の神経活動の解析は,従来,神経活動にともなって発生する脳電位の変動を分析する脳波検査によって行われてきた。しかしながら,この方法では脳における、機能局在とその時間的変化を詳細に解析するのはきわめて困難である。本研究では超伝導量子干渉素子を用いる37チャンネル生体磁気計測システム(magnetic source imaginq:MSI)を用いて体性感覚の機能局在と情報処理機構を解析し,さらに臨床症例における体性誘発磁場の異常についての検討をおこなった。 まず,体性感覚誘発磁場の解析として,手指,正中神経および後脛骨神経刺激に対する体性感覚誘発磁場の局在推定をおこなった。さらに体性感覚誘発電位であるP22の磁場成分にあたるP22m成分について,10名の成人を対象として解析した。 臨床例における体性誘発磁場の検討として,ミオクローヌスてんかん症例でのgiant SEPに対応する体性誘発磁場の検出と,これに基づく発生源の局在の推定を4症例についておこなった。 手指,正中神経および後脛骨神経刺激に対する体性感覚誘発磁場の局在推定の検討では,半球間裂に面して,足から小指,示指,拇指と順序よく一次体性感覚野の分布をえることができた。P22m成分についての検討で,健常者の約半数に同成分を証明した。P22m成分の局在推定結果をMRIに重ねると,その発生源は運動野にあるものと推測された。 ミオクローヌスてんかん症例での体性誘発磁場の検討から,皮質のgiant SEPは中心後回の体性感覚野に局在するものであることを示した。このような症例における体性誘発磁場の検討は病変の局在の推定と,その外科的治療の際に有用と考える。 本研究により,37チャンネル生体磁気システムが体性感覚野の三次元局在の解析にきわめて有用であることがあきらかになった。
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