研究課題/領域番号 |
05404085
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研究種目 |
一般研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 東京大学 (1994) 新潟大学 (1993) |
研究代表者 |
三品 昌美 東京大学, 医学部(医), 教授 (80144351)
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研究分担者 |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (40162325)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
22,400千円 (直接経費: 22,400千円)
1994年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 14,400千円 (直接経費: 14,400千円)
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キーワード | NMDA受容体チャネル / ε1サブユニット / シナプス可塑性 / シナプス長期増強 / 空間学習 / 標的遺伝子組換え(遺伝子ノックアウト) / 海馬 / 記憶・学習のシナプス可塑性仮説 / 記憶 / 学習 / シナプス形成 / 遺伝子ノックアウト / ES細胞 |
研究概要 |
本研究は、標的遺伝子組換え法によりNMDA受容体チャネルの各サブユニットを欠損した変異マウスを作成し、NMDA受容体チャネルの脳における神経情報伝達、脳の高次機能、脳の発生および脳の病態時における神経細胞死に果たす役割を個体レベルで解明することを目的とし、以下の成果を挙げることができた。クローン化したcDNAをプローブとしてマウスNMDA受容体チャネルの多様性を決定しているεサブユニットの遺伝子断片を単離し、エキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子を挿入することにより、NMDA受容体チャネルのサブユニット遺伝子を不活化した。不活化した遺伝子をマウスES細胞にエレクトロポレーション法により導入し、遺伝子をノックアウトした細胞株を得た。ε1サブユニット欠損マウスは普通に発育し、脳神経系は形態学的にも組織化学的にも正常であった。海馬スライス標本にパッチクランプ法を適用し、NMDA受容体チャネル電流を測定した結果、ε1サブユニット欠損マウスではAMPA受容体チャネル電流に対するNMDA受容体チャネル電流の相対的な比率が約半分に低下していることを示した。残存するNMDA受容体チャネル電流はε2サブユニットによるものと推察した。さらに、ε1サブユニット欠損マウスでは高頻度により誘発される海馬シナプスの長期増強の程度も低下していること、すなわちシナプスの可塑性が減少していることを見い出した。最後に、ε1サブユニット欠損マウスの学習能力をモリスの水迷路学習法を用いて検討した。ヒドンプラットフォームテストおよびトランスファーテストのいずれにおいてもε1サブユニット欠損マウスは低い学習能力しか示さないことを明らかにした。すなわち、ε1サブユニットは実際に脳神経系で機能しているNMDA受容体チャネルを形成し、海馬シナプスの長期増強およびマウスの空間学習に関与していることを示した。これらの結果は、ある種の記憶・学習はシナプス可塑性に基づいているとの考えを支持するものである。
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